おかえりなさいキミの物語へ

zushonos2007-10-10

(2日前の続き)

給油後そのまま伊勢方面に抜けて高速を走ったりして国道166号で奈良県に入る。
途中、1年半前に散髪した上山理容の前を通る。散髪したときは奈良県側から峠を下り始めてすぐのところだと思っていたが、上山理容前を越えて峠まではわりと距離があって驚いた。
県道などをつないで川上村に入り、道の駅で昼飯。かつては全国川上町村連絡協議会というものがあり、全国の6の川上村もしくは町がこれに加盟していたそうだが(この協議会による「川上宣言」の第一項が素敵)、市町村合併の結果、現存するのは長野県川上村と奈良県川上村のみ。長野県川上村で散髪したことがある私は、奈良県川上村で散髪すれば、現存するすべての川上村で散髪した経歴を持つことになるので、これはなかなか魅力的である。しかし、今回の本命は別にあった。
最初は「出かけたついでに散髪」だったのが「散髪のために出かける」になって久しい。地図を眺めてできるだけ散髪屋が少ないだろうと思われる地域に目星をつけて出かける。たぶん役場にでも問い合わせれば散髪屋の有無はわかるのだが、敢えてそれはしないというのがなんとなく決め事になっている。
今回の本命は、国道が通っていない野迫川村。奈良・和歌山県境、高野龍神スカイラインの東側に位置する。奈良県側の国道168号から県道53号を使って役場に行こうとすると、地図で見る限り細く曲がりくねった道を15kmも走ることになる。スカイライン側から役場までは(おそらく)村道を2kmほど下ればアクセスできるが、これとて、集落のない、もともと観光道路であるスカイラインに入ってから8kmほど走ったところから分岐した道である。わざわざ訪れない限り通過することはないだろう。しかも県内で人口最少(700人くらい)。これは魅力的。
川上村から林道で洞川温泉に抜けて、天川村を横断する。山中の道は狭くてなかなか先に進めず、思ったよりも野迫川村は遠い。それでも15時くらいまでには野迫川入りできそうな気がしてきたので、散髪屋での会話を妄想しようとして気づいた。
財布の中身は散髪に足りるだろうか。散髪代の相場は3000円から4000円。昼飯を食ったときに1000円札を崩したが、あのとき残りの1000円札が何枚あったのだろう。昼飯に700円も使ってしまったが、軽率だった。銀行やコンビニエンスストアの存在など望むべくもない山中にあって、頼りになるのは郵便局だ。それも民営化に伴いサービス低下が心配されるというニュースを耳にすることが多い昨今、はたしてATMは使えるのだろうか。
そんなことを考えながら走っていると、山中にしては立派すぎるような郵便局が目に入った。喜び勇んでATMに向かうと入り口の鍵が閉まっていた。土曜日の営業時間は14時までとなっていた。バイクに戻って時計を見てみると2時10分。朝判明した時計のずれを考えると、5分ほど前に終業したことになる。昼飯を早めに切り上げればよかったと後悔。
この先、野迫川村に直進すると、金融機関はありそうにない。国道に出た時点で北か南に向かい、市街地に出た方が良いかもしれない。しかしそうすると野迫川村の滞在時間が減ってしまう。金が手に入っても、散髪屋が営業終了してしまって結局散髪できないというのは最悪だ。金がなくても散髪してもらう方法はないだろうか。「仕事を手伝う」とか「カメラを質に置いていく」とか「友人に金を持ってきてもらう」といった方法を考えた。通常は終了後精算なので「切ってもらってから忘れてきたふりをする」というのもありだ。いや、なしだ。
国道まで出たところにまた郵便局があったが、こちらのATMは12時半まで。ええい、ままよ(初めて自分で書いてみたぜこのフレイズ)と野迫川村に突入。県道53号を進むと、いくつかの集落が出てくる。いずれも50戸未満といったところか。商業施設はほとんどない。立派な公民館がある集落もあったが、散髪屋はない。
狭い山道を抜けて役場のある集落に到着したのは15時。小学校もあったが、散髪屋はない。しかし郵便局があって、ATMは17時まで営業していたので、やっと金を下ろすことができた。ちなみにここで初めて財布の中を確認したのだが、4000円残っていたので、実際には金を下ろさずとも散髪はできたのであるが、ともかく一安心だった。
野迫川温泉がある集落にも行ってみたが、結局散髪屋は見当たらず。困った。
(つづく)