Elbow-style, ecso2

金曜日は水面下業務の延長で、仕事からの帰りがけに、自宅との中間地点にある取引先の事務所で打ち合わせを行った。毎年この時期は同様の打ち合わせを行うのだが、新たな材料に欠け、盛り上がらない打ち合わせとなってしまうことが多かった。しかし、今年は、例年と同様な発注ではあったが、材料について例年と多少趣を変更したことに加えて、例年と同様なものの発展形の発注もしたいと伝えると、相手の反応が例年と違って乗り気だった。これに気をよくした私は、帰路に着くために颯爽とバイクにまたがったところで、道順がよくわからないことに気づいた。
基本的には、事務所の前の大通りを右方向に行けば良いのだが、この大通りは、中央部の頭上を首都高速が走っており、事務所からは左方向にしか進むことができず、高架の隙間や、許可された交差点でUターンする必要がある。これらの場所が頭に入っておらず、しかし、逃すと長大なアンダーパスに進入してしまい引き返すのが困難になることはわかっていた。その失敗を嫌い、最初の交差点(Uターンは禁止)で左折し、左折を繰り返して右折可能な交差点で大通りに復帰する作戦を取った。ところがこれがまた失敗で、細い路地に入ってしまい、大通りに出たのは良いが結局左折しかできない。しかし、その場所から、Uターン可能な高架下の転回場所が確認できたので、車が途切れるのを待って、そこに進入した。
転回場所と反対車線が接するところは停止線になっているので、当然一旦停止して周囲をうかがう。バイクは反対車線に対して垂直かやや右を向いて止まっている状態だ。目の前と右手方向には車は見当たらない。左手を見ると、数十メートル向こうの信号がちょうど青になったのか、いくつかのヘッドライトがこちらに向かって動き出すところだった。
ヘッドライトが近づくまでにはまだ時間があるが、あまりゆっくりUターンしていると、その車にアクセルを緩めさせたりブレーキをかけさせたりして円滑な交通を妨げると判断した。運転暦も10年を超え、うち半分以上は、毎日のように、都市部を40km超走っている私であるから、この判断は間違っていなかったという自信はある。
ところで、毎年、年が明けて春までの時期は、水面下の業務が集中するため、ほかのことに気が回らないことにも起因するのか、運転中に、何らかのやっかいごとに巻き込まれる(主な原因は全て自分にあるが)。キャリアが壊れたり、エアクリーナーが詰まったり、エンジンが壊れたり、ガス欠したり、信号無視で捕まったり、進路変更禁止区間違反だかなんだかで捕まったり。今年はこの時点まで何事もなかったが、まだ春ではないし、少し前の秋にチェーンが切れるという面倒があったので、この恒例行事についてはまったく意識していなかった。
それでも、思い返してみると予兆はあった。リコール対象にもなったTPS不良からくるエンジンの不調なのか、ほかのなにかが原因なのか、右折時に、エンジン回転の不安定と、リアタイヤが滑るということが何度かあったのだ。
そして、若干勢いよくUターンを開始した直後、リアタイヤが滑り出し、立て直すまもなく転倒、ステップが路面とこすれて火花が散るのが見えた。バイクは右向きに倒れたのだが、自分は勢いがついて一回転したのだろうか、体の左側面から接地した。
近づいてきていた車は、おそらく十分な車間があったのだろう、急ブレーキという風情でもなく、10メートルほど手前で静かに停止した。いかんせん交通量が極めて多い通りで、その後ろにどんどん車がたまっていくのを横目に見ながら、バイクを起こした。最近、林道などでの転倒時に、すぐにバイクを起こせず、体力低下を疑うことが多かったが、このときはすぐに起こすことができ、心配して止まってくれた125ccのスクーターの兄ちゃん(おっちゃん寄りの印象ではあった)がちょっとした交通整理をしてくれている間に、路肩までバイクを押して行った。結局、全体の交通をおそらく1,2分にわたって妨げてしまった。
スクーターの兄ちゃんは、私の体の心配をしてくれて、また「ぶつけられたのではありませんよね。誰にでもたまにはこういこともありますよ」と慰めてくれた(のか馬鹿にしていたのか)。後に左ひじをすりむいたことに気づいたのだが、このときは尻と足の左側面を打った痛みがあるくらいで、まあたいした怪我はなかった。「お恥ずかしい、ご心配かけました、ありがとうございました」と詫びて礼を言うと、兄ちゃんは再びスクーターに乗って去って行った。
私はねじれたフロントフォークを蹴飛ばして修正したり、自分の体のストレッチをしたりしながら、今回の無様な有様の原因を考えてみた。打ち合わせが思いのほか具合が良かったので、気が緩んでいたのだろうか。警察の厄介になるときはおおむね一段落して気が緩んでいたものだ。故障や破損の類は、一段落すらせず、水面下業務渦中(水面下といえど建物の中なので実際には渦は起きない)の中の渦中ということが多かった。今回はその中間であった。失速によるもの(つまり立ちゴケ)ではないアスファルト上での転倒は、自分が起こした追突事故以外では初めてかもしれない。
などと考えながら、まだ痛む尻と左足をおしてバイクにまたがり、やっとこさ帰路についた。いつもは安全のためと主張してやまない自分独自のペースでどんどん走るが、さすがに遠慮して周囲にあわせたペースで走る。しばらく走ると、125ccスクーターの後ろについたのだが、乗り手の背格好から、どうやらそれが先ほど止まってくれた兄ちゃんだと知れた。いつもの私であればその全体の流れに比べてもゆったりしたペースにあわせることができず、先に行ってしまうところであったが、今回は追い抜いてしまうのも気恥ずかしかったし、近づきすぎるのも同様だったので、10mほど間隔をあけて後ろからついて行った。
あの兄ちゃんがいなかったら、一人で車の流れを止めて路肩に避難しなければならなかったのだと思うと、感謝の念が強くなる。ありがたや、と思った直後、兄ちゃんは火のついた煙草を路上に捨てた。いい人かもしれないが悪いやつだ。
「自分はさまざまな悪いこともしてきたが、こうやってごみをそこらに捨てることだけはしない」と、紀伊半島某所の展望台下斜面に散乱するごみの山を見て嘆きながら携帯灰皿に自分の煙草を捨てたマサオの有様を思い出した。

例年に比べると水面下業務から私が直接受ける負荷自体はいまのところ少ない。それでも、土曜日から日曜日にかけて。水面下で一定の業務をこなした。
土曜日は午前中に極めて快く嫁を送り出し、それからXT660のリコール作業を受けに行き、いったん帰宅してこんどはSX4を購入したディーラーに持ちこんでの6ヵ月点検とオイル交換。
このディーラーは、前にジムニーを購入したディーラーと同じ販売会社の店で、自宅からの距離もほぼ等しいが、前のディーラーでは購入時の担当営業の人が異動になって以後、実に対応が味気なくなったので、新しいディーラーに変えたという経緯がある。新しいディーラーでは、最初に応対してくれた人も、引き継いで対応してくれた店長も、とても熱心で、信頼感がある人だったので、長い付き合いがでいそうだと思っていた。
6ヵ月点検の予約をしようと電話をかけ、店長を指名したところ、聞き返された。再度店長の名前を伝えると「○○は異動になりまして」という。帰省から帰ってきたときに届いていた点検案内のはがきには店長の名前が書いてあったのに。あまつさえ、異動先は、ジムニーを購入したディーラーだという。むー。まあ、話をしやすい店が2つになったと思えば良いか。あまり利点も感じられないが。
日曜日はプロミス(金融ではない)をめぐりひと悶着。私もおかしいが相手も間違いなくおかしい、と、おかしい私には確信できる。おかしくないときにどう思うかはわからんが。川原でシメを見た。

月曜日は私の発注内容の説明不足から危機を招きかけたが、ヒガドウの絶妙なアシストに救われる。説明不足にいたった背景も、いま考えてみると大して余裕もないのに余裕があるような錯覚というかなんというかそんなものだろう。皇居の堀にキンクロハジロ多数。
火曜日は小康。以前バナナがあったところの近くでこんどはりんごを発見。水曜日は乱高下。水面上で大量のカルガモ。りんごは火曜日よりも体積が減っていた。