みかん食ったあと

手書き文字掲示物の例


ワードプロセッサやらなんやらがありふれてきて(ところで近頃の若人に「ワープロ」と言って通用するのかね。はたまた「ファミコン」はどうでしょうか)、手書きの掲示物を見る機会が減ってきた。
私が通った小学校では、全員が何かしらの係に着任することになっていたのだが、けいじ係(低学年時は表記もひらがなで、より一層期待が高まる)がその名の響きからかあるいは仕事の内容−壁新聞(これも世間的世代的に通用するのかどうか)を作成・掲示する係であった−からか、そこそこ人気が高かった。この壁新聞ももちろん手書きであった。
しかし、10年ほど前からは多くのご家庭にパーソナルコンピュータが置かれるようになりプリンターも低価格化が進んだのです。ちょっとかっこつけた掲示物はのきなみプリントアウトされたものになっていったのですよ。
いつものごとく脱線すると、手書きで何か書きとめるとき、若い人はたいてい横書きしますね。俺様は意識して縦書きするようにしていたらわりと自然に縦書きできるようになった。指を一本ずつ交差させて手を組むとき、どちらの手の親指が上にくるかでどうのこうのというモハメド・アヴドゥルのせりふを読んで、意識して逆の組み方をするようにしていたら、今ではどちらが自分にとって自然な組み方なのかわからなくなってしまった。かように実現できそうな癖直しはいくつか試したことがあるという独白でした。
手書き文字掲示物が減っていく中、水面下に張り出される、社員食堂の週代わりメニュー表は手書き文字を堅持している。あまつさえカタカナの「メ」が「ヌ」に見える特徴的な文字というおまけつき。毎週どこかに「ラーヌン」と書いてあるのだ。
手書き文字掲示物のもう一つの雄(というよりも一般にはこちらしかわからんじゃろ)は、警察の目撃者募集看板だ。事故・事件現場などに立てかけられる、高さ180cm、幅30cmくらいの、白地にスミ文字、要所が朱筆というあれだ。あれを書くのが仕事の人もいたりするんじゃろうなあ、プリンタで出力すればええのになあと思ったこともあるが、注意して見ていると、印刷文字の看板もわりと多く、比較するとしかし、やはり手書きの方が訴える力が強いと思う。
印刷文字の看板で、要所が空欄になっていて、そこに赤文字の名札(「バイク」とか「歩行者」、「追突」、「惨殺」などという文字が書かれている。正直に書くと最後のやつは見たことありません)が貼り付けてあるものも散見するが、それはつまり使いまわしが利くようにテンプレートが作り置きしてあるほど目撃者不在の事件・事故が発生しているということだと考えると、うかつに外出できんなあと思うが、同時にそんなこと考えても仕方が無いなあとも思い、適当なところで考えるのを止め、なんとか正気を保つ昨今です。