脱線回復

答え合わせ結果


例年通り、数ヶ月辛い労働が続き、それが一息ついた後も、身の回りのことに無気力になってしまい、惰眠を貪るような有様がしばらく続いた。
この間、12月は「積年の夢を実現:白川郷散髪」「はつもうで」「積年の夢を実現:10人乗りレンタカーで仙台ごんじりパーティ改めマリオカートツアー」「色違い/それ俺のです」「忘年会連発」「帰郷とエンジェル」、1月は「空と僕との間には地表」「食いすぎ」「トニー賞」、2月は「カウントダウンJT」「中一週間」「まつさかさんぱつ」「かみがない」などいろいろねたはあったが、これらについてはまた気が向いたら書く。
3月を迎え、隣の畑では梅の花が咲き誇り、うぐいすの姿を見かけるようになったころ、今年もまた、あの人のアクションで目が覚めた。

あの人-ジャックさんの机上の有様については、昨年書いたとおりであるが、それを追補するできごとがあった。昨年末、組織変更に伴う席の配置変えがあった折、ジャックさんは「あとは運ぶだけでいいから」と言い残し、遅い夏休みを取得して不在だったので、留守を預かる我々が引越し作業を代行した。
普段から割と片付いているジャックさんの荷物は、順調に新しい席に移されていった。資料として必要な重い書籍が多数あるが、私を含め、ジャックさんを慕う若造がよく体を動かし、滞りなく作業が進む。
書籍、パソコン、テープカッターと、重いものから作業を進めていき、筆記用具が載った木の皿を移す段になった。定規や鋏、ステイプラーにボールペン、油性水性入り乱れたマジックペン、蛍光ペンなど、日常業務の必需品が載った、長辺30cm、短辺10cmほどの浅い木の皿だ。こう書くとどうということはないのだが、以前述べた(http://d.hatena.ne.jp/zushonos/20050629)ように、ペンの数が常軌を逸している。
我々の業務に必要なのは、ボールペン赤青緑黒+蛍光ペン2色程度、せいぜい6色のはずで、これらのペンが予備を含め2本ずつあれば十分だと思われる。しかし、ジャックさんの机上の筆記用具は、蛍光ペンだけでも色とりどり、30本は超えるだろう。通常は机上に散乱していることが多い筆記用具も、引越しのためにジャックさん自身の手によって木皿に満載されていて、それはまた普段と違う迫力があった。
その夥しさに目がくらむ。それと同時に違和感をおぼえた。本数も確かに多いが、どうやらその種類が多すぎるのだ。正々堂々と筆記用具に触れられるせっかくの機会なので、仔細に観察すべく注視した。
原因の一つは、蛍光ペンのモデルの違いだった。現在社内で手に入るのは、両端に細書きと太書きのペンがついた蛍光ペンだ。ベースが白で、太書きの方のキャップと本体にペンの色を示すラインが入ったものだが、ジャックさんの木皿には、同一銘柄で、ベース部分が黒のものが散見された。これはジャックさんの物持ちのよさを示している可能性がなきにしもあらず、世間の評価が一方的にマイナスに傾くことはないだろう。
もう一つの原因については、世間の評価の振幅が大きいと思われる。なんとなれば、違う色のキャップと本体を組み合わせているものが、多数あったのだ。白ベースオレンジ本体に黒ベースピンクキャップ、紫本体に緑キャップ、てな具合である。別銘柄の蛍光ペンもあったが、これさえも、青本体に茶キャップという組み合わせだった。
興奮を抑えて木皿を運んだあとは、引き出しの引越しにかかる。同じ形状の机に引っ越すので、引き出しだけ取り外して入れ替えるのだ。そこから小銭を取り出して煙草や飲み物を買いにいくジャックさんをしばしば見ていたし、また時折いやしばしば開けっ放しになっているのを見ていたので、右側の引き出しには小銭が満載なのは知っていた。改めて見てみると相当な金額になりそうで、ずっしり感を感じながら新しい席に持っていった。
左の引き出しの中を見るのは初めてだった。資料はもう運んだし、小銭も持っていった。残ったこの引き出しには何が入っているのだろうかと期待しながら、開けた。驚愕した。
そこには木皿の上とそう変わらない光景が広がっていた。引き出しの中にも、筆記用具が満載だったのだ。もちろんキャップと本体の色の組み合わせはさまざま。
一点、大きく異なることがあった。
以前書いたように、我々の業務に於いて、赤青緑黒の4色ボールペンは、とても使い勝手がよく、私、ジャックさん、駄洒落が好きな人は、同一のモデル(ボディは色違い)を愛用していた。私などは、愛用するあまり、その替芯にまつわるやっかいごとを経験したばかりだった。(http://d.hatena.ne.jp/zushonos/20051106http://d.hatena.ne.jp/zushonos/20051109http://d.hatena.ne.jp/zushonos/20051118)ジャックさんはしばらく前に「赤インクが切れた」と言って、残りの3色ペンとして使ったりしていた。駄洒落が好きな人はこのころすでに上昇志向で、ボールペンを握っているような姿をしばらく見ていなかったのでよくわからない。
その4色ボールペンが、蛍光ペンの山に埋もれて横たわっていた。そういえば、あれだけの騒動になった自分の4色ボールペンがここ数週間行方不明だったなあと思いながら手にとって見る。駄洒落が好きな人の4色ボールペンは青みがかったクリアボディだった。私のそれは黒っぽいクリアボディだった。ジャックさんのそれは黒い不透明なボディだった。いま手にとって見たボールペンは、黒っぽいクリアボディだった。シャツのポケットにはさむとき有用なクリップ部分に入ったひびは、行方不明の私のボールペンと瓜二つだった。つうか私のボールペンですよこれ。
その後"地下に降りたヨンさま"の異名をとる、北別府学と私と誕生月日が同じ姐さんと一緒に、色違い蛍光ペンを正しい組み合わせに戻す答え合わせ作業をしてわかったのだが、引き出しの中身のほうはすでに書けなくなってしまったペンが多く、キャップすらついていないものがあった(しかし、答え合わせの結果、キャップが多数余ってしまった)。
同一モデルだし、ボディも同じような色だから、ジャックさんが私のボールペンを持っていってしまったのはまあわかる。しかし、私のボールペンは、大変な騒動を経て、4色ともしっかり使えていたのに、2軍の場所に追いやられていたのが残念だった。つうか普段ジャックさんが使っていたらおそらく現場を押さえられたのに、発見が遅れたなあ。しかも当人がその場におらず、たったこれだけのことを後日改めて抗議するのもはばかられる。もし抗議しても「悪い、ごめん」なんて言われたら「あいえいえいえこちらこそ放置していたのが不注意でした」なんつうことになるに違いないと確信。
ともかく、これは「色違い/それ俺のです」の顛末で、これはこんど気が向いたら書こうと思っていたことで、今回目が覚めたできごとはまた別の話なのであるけれども眠いので「目が覚めた」件は改めて書くことにする。


答え合わせの結果です