移動手段

サイトウの「真面目に読め」という逸話について書いておこう。サイトウは中学高校時代に比較的交流が厚かった一級上の男だ。一級上の連中には、肉体的・精神的に乱暴者で、かつベビーフェイスが多かった。唯一、高校教師を父親に持つ男がヒールだったと言える。あ、龍を見た男もヒールかのう。ともかくそのおおむねベビーフェイス集団にあって、サイトウは肉体的に優れているわけではなく、性格のねじれ方が優れた男だった(褒めことば)。

サイトウは、中古自動車屋を営む家の長男に生まれ、跡目を継ぐことになっていたはずだが、サイトウの口から放たれる父親評は、反骨精神に満ち満ちたものだった。サイトウが父親に向かって「てめえいつか殺す」と啖呵を切ったところ、父親は「やれるもんならやってみい」と返したという微笑ましい話がある。一方、私が仏壇屋の広告を見て「仏壇を定価で買うやつはおるんじゃろうか」と疑問を口にしたところ、サイトウは「俺は親の仏壇は絶対に安売りのものなんか買わず高級なものを買う」と答えるなど、愛憎半ばするありさまを見せたこともある。

そんなサイトウが、当時流行していたゲームブックを、ルールに従って読んでいた。それはつまり、10ページを読んだ次に182ページを読み、さいころを振って6が出たので次は93ページを読む、というようなことになる。ゲームブックを知らない父親は、そんなサイトウのありさまを見て、「本は真面目に読め」と怒りをあらわにしたという。

話変わって土曜日、会社の若者、ハッセルホフ(仮)がバイクの免許を取得、中古のZZR400を購入したので、年寄り風を吹かせてツーリングの先導をした。ハッセルホフはバイクでの公道走行は実質2日目だそうだが、四輪ではぶいぶい走っており、雪の中に閉じ込められた経験もある。四輪では走りなれているという、富士山一周のコース(自宅からは300km強)にした。

8時に東京IC前で合流。自宅から近すぎて遅刻。ごめんなさい。東名高速で御殿場まで行く。100km/h程度で巡航。ときどき少し加速。ハッセルホフは「手が痺れる」という感想。おそらく手や肩に力が入ってしまっているのだろう。四輪に比べたら手に振動が来るとは思うが、リアタイヤの磨耗度合いなど、バイクの状態もやや気になる。

2日前までは土日が曇で前後晴という予報だったが、前日の予報では土曜日も晴れることになっていた。しかし雨がぱらつくことはあっても晴れる気配はない。富士山スカイラインを登ると寒くなってきたので今シーズン初フリース、初ウィンドストッパーの首巻。ハッセルホフは若さで乗り切った。旧有料道路で新五合目まで登ると、紅葉は見事だったが寒さのほうが勝っていた。下って富士山スカイラインまで戻ると、気温表示は7度だった。音止の滝、白糸の滝を見て、鳴沢に抜け、山中湖・道志経由で帰宅。途中少しずつすり抜けなどやってはいけない見本を披露した。

二輪は素敵な移動手段だ。四輪に比べると「渋滞の影響を受けにくい」「一人で移動する場合おおむね安上がり」「風雨、寒暖をより直接的に感じられる」「同じ状態で衝突したら死にやすい(と思う)」といった特徴がある。私はおおむね二輪の方が好きなのだが、水面下では、ときどきもっと夢のある交通手段があるだろうという話になる。昨今有力なのは「動く歩道」と「ジャンプ台」だ。

前者はSidアニキにまかせるとして、ジャンプ台について説明しておく。自家用から始まって、大字ジャンプ台、市区町村ジャンプ台、県別ジャンプ台、地方別ジャンプ台、大陸間ジャンプ台などの規模がある。行き先を定めてジャンプ台に飛び乗ると、目的地に飛んでいけるわけだ。ジャンプ台はまあ基本的にトランポリンのようなやつ。エキサイトバイクスーパージャンプ台のようなやつも良い。空中でぶつかったら元のジャンプ台まで戻る。想像してみよう。道路は必要なくなり、渋滞もない。夢の交通手段だ。


以下運動日記:金曜日は初めてNO-GI練習。棒を使って握力強化。股くぐり+馬とびは14.5回と16回。左足中指突き指した。突き指の部位を示して「○○を突き指」と書くとどうしても指が2回続いて気持ち悪い。ガードから腕十字の入り方。対角の二の腕をつかみ、反対の手で肘を押して二の腕確保。相手の腕を確保して、その腕側の腰を蹴って反対の足を蹴り上げ、確保していない方の脇を空けさせる。相手の頭を抑え、腰を蹴った方の足で頭をまたいで膝を締める。十字狙いで腕を抜かれた場合はアームロック狙い。スパーは1回で疲れ果てた。