まりもの産地、酒は温めて、B(ドイツ語読み)の前、最も優れた箇所

zushonos2005-06-29


ジャックさんをひとことで紹介すると「話が長い人」だ。私も話が長いと言われるが、ジャックさんには敵わない。ジャックさんの長話を第三者として聞いていると、少々共感を覚える。当事者として聞いていると、自分の長い話に反省を覚える。

ジャックさんは私の父と同じくらいの年齢で、父が諸事情から家族に冷たくされ顔面神経痛になり入院したのと対照的に、業界の重鎮であり、誰もが彼とは一歩距離をもとい彼には一目置く。その知識と想像するにその個性とが買われて、森田の番組(深夜の方)に出演したこともあるそうだ。

中肉中背で、髪はしっかりあるが見事な銀髪というか白髪だ。冬の通勤時はロングコートに薄い色のサングラスといういでたちでなかなかイカス。

そんなジャックさんと、この三ヶ月、ほぼタッグチームとして仕事をする僥倖に見まわれたもとい恵まれた。我々の仕事はやや特殊な出版物の編集である。

ジャックさんの知識と経験はおそらく業界一で、誰にも負けない。ただ、編集作業の中に占めるDTPの割合が肥大化している現在、それらの作業については若造たる我々が担うべきとされているし、私もその分担に異存はない。

ジャックさんも慣れたもので、やりたくないもとい若造のほうが得意な仕事は「悪い、これやってくれ」と、近所の若造に依頼する。誰もが一目置いているわけだし、またその頼みかたがいわばチャーミングなのだろう、若造は必ず引き受けてしまう。

また、その圧倒的知識と経験のため、商品の現状に満足がいかず、幾多の意見を出し、いくばくかの修正に着手し、「これでできあがり」−その実、往々にしてさらに修正が必要な「あとはやっといて」状態であるが−となることが多い。このありさまから、現状にメスを入れまくって縫合しない切り裂き魔→ジャックさんと呼ばせていただくことにしたのであって、長柄豊崎宮などとは無関係だ。

さて、タッグを組む前、2月のまたもや回顧録

その日は早めに帰ってしまったジャックさんの席の回りで、それぞれ別の商品で煮詰まっていた数名が息抜きの与太話を始めた。机の上がきれいだとか汚いとか、そんな話になっていたのだろう。本人不在の状態で、ジャックさんの机が標的になった。ジャックさんの机は実のところ余計なものが少なくかなりまとまっている。そこに必要以上にしか見えない筆記用具が散乱しているというのが定番で、この日のありさまもそれを逸脱するものではなかった。

前述のように我々の仕事は出版物の編集であり、DTP作業も必要になるが、それに先立って、ある種の原稿を書き上げる、脱稿という工程がある。ジャックさんは卓上カレンダーにこの日付をメモしていた(2月25日)。しかし、それに似せて、常軌を逸脱するメモが朱書き+墨入れされていた(2月10日)。

さすが重鎮、やることが違う。ジャックさんにピカレスクロマンを見た。