いききくぬぬぬぬ

zushonos2004-12-22

15年来の知人が私を紹介する文章に「裏図書」(うらとしょ と読む)ということばを持ち出したのを読んで、懐かしく思うと同時に、橋沢図書助という筆名も10年以上使っているのだなあと我ながら感心した。

裏図書と、件の紹介文に併記されていたジュニアリーダーについては改めて述べたく思うが、かんたんにいうと、あの時代特有のはしかのようなもので、と書こうとしてはしかにはかかったはずだがどんなものかおぼえていない、ところでこんな表現はちかごろ使われるのだろうか、そういえばまったく本を読んでいないなあなどと考えが巡った。

橋沢図書助は、荒木飛呂彦漫画の主人公の苗字と、芦名四天王の一人である松本図書之助の名前を組み合わせたものだ。後者は「信長の野望武将風雲録」で知った。たしか能力値平均が40程度しかなかくて、存在意義がよくわからなかったのと、名前に「図書」という文字があったのがかっこいいと思えて、印象に残った。ちなみに武将風雲録では「松本図書助」と表示され、振り仮名はなかったので、私とその周辺は当初「としょすけ」と読んでいた。山岡宗八だか吉川英治だかの本で芦名四天王の一人として紹介されているが、そちらでは「松本図書之助」と、また「ずしょのすけ」という読みとあわせて書かれていたと思う。自分の筆名にしたのはこの本を読んだ前か後か忘れたが、きっかけを尊重して表記は「図書助」を使っている。

筆名も好きだが、本名もわりと好きだ。苗字5拍、名前6拍の全部で11拍あり、小学校低学年では長い名前だというだけで話題になった。しかし、たとえばプリントに名前を書くマスが10個しかなく、ひらがなでは書ききれないといった苦労もあった。親によると、当初は前半の4拍を名前にする計画だったが、短すぎるという理由で後半の2拍を付け足したそうだ。冗談ならなかなか素敵だ。

ともかく、名前に助けられたり苦しめられたりした結果、名前の扱いは慎重になったと思う。自分の名前の読み書きを間違えられると頭にくるので、他人の名前もできるだけ間違えないように読み書きしているつもりだ。ほかの間違いはどうでも良いが、名前を間違えて書いてしまったときは申し訳なく思う。

先日、ゲームの主人公につける名前の話になった。私は本名やそれを変形させた名前をつけたことはないと思う。古い順に、ヘポロッチョ、万次郎、図書助やその変形を中心につけてきた。ちかごろは動物の名前をつけることも多い。上で名前には慎重と書いたが、それでも適当に名前をつけていたことがある。

小学生のときにファミコンウィザードリィをやった。地下迷宮に潜って狂王トレボーをやっつけるというコンピュータロールプレイングゲームだ。主人公は種族と職業を比較的自由に選べる。私の場合、主力キャラクタは戦士、戦士、侍、魔法使い、僧侶、盗賊というパーティだったと思う。これらのキャラクタには、前述のような名前のうち、当時常用していたものをつけた。
最初は勝手がわからず、何度かキャラクタをロストさせたりした。そのうちこつがつかめてきて、キャラクタは強くなってきた。それに伴って、宝箱から未確定アイテムを拾う機会も増えてきた。
事前に雑誌等から得た知識で(たぶん説明書にも書いてあったが)、未確定アイテムは、ビショップによって識別することができ、ものによっては高性能なアイテムだったり、高く売れたりすることがわかっていた。未確定のままでも本来の機能を果たすが、ものによっては呪いがかかっているなどの理由で不用意に使うと良くない。
そこで、ビショップのキャラクタを作るのだが、ビショップはレベルアップに必要な経験値が多く、なかなか成長しない。結果、地下深く入っていくメインのパーティに組み込むことは難しく、基本的に酒場に待機しておき、識別しまくるためだけのキャラクタが作られることになった。何かの都合で少し地下の奥に進み、敵と遭遇した結果一撃で死んでしまったら、そのキャラクタは放置してロストさせてしまってもよいという風潮があったと思う。そういえばキャラクタ作って初期の所持金を巻き上げるてなこともやったなあ。
ファミコン版では、キャラクタの名前は50音表やアルファベットの表から好きな文字を選んでつけることになっていた。使い捨ての扱いを受けたビショップの名前は、「あ」「うううう」「れ」といった、記号同然のものだった。
何人目かのビショップに名前をつけるとき、HAL研究所製のジョイボールを使用して、カーソルを50音表内で自在に動かしながら、適当なところでAボタンを押して命名という手段を思いついた、ような気がするが、ジョイボールを使ったという点については記憶を美化しているかもしれず、通常のコントローラーだったような気配も濃い。余談だが、ジョイボールを使って楽だったゲームはファミリーサーキット、難しかったのはスペランカーだ。アスキースティックL5を使ったときはもっと難しかった。
それはさておき、ある日、それまでのビショップと同じ扱いを受けるべくして生まれたキャラクタに、偶然に付いた名前が「いききくぬぬぬぬ」だった。

そのころ、メインのパーティはさらに地下深く進むようになっており、宝箱で拾う未確定アイテムも、良くも悪くも強力なものが増えてきた。強力な未確定アイテムは、低レベルのビショップにはなかなか識別できない。ビショップのレベルを上げてやる必要が出てきた。メインのキャラクタが強力になっていたので、足手まといが一人いても、なんとかなるようになってきていた。

いききくぬぬぬぬという名前に心を惹かれたのか、たまたま周囲の状況が変わってきたときに作られたキャラクタだったかは失念したが、ともかく、いききくぬぬぬぬはメインパーティ専属の識別師として、若干遅れながらも、ともに成長していくキャラクタに抜擢された。豪華な鎧も真っ二つの剣もカシナートの剣も盗賊の短刀も村正も全ていききくぬぬぬぬが識別したのだ(と思う)。

以来、我が家では、ビショップといえばいききくぬぬぬぬと決まってしまった。ファミコン版でウィザードリィII、IIIをやったときも、PC98版でVをやったときも、ベイン・オブ・ザ・コズミックフォージをやったときでさえ、ビショップはいききくぬぬぬぬだったのだ。しかし最後に揚げたやつにビショップという属性があったかどうか忘れたなあ。何かで、名前にひらがなが使えなくてIKIKIKUNUNUNUNUとしようとして、文字が多すぎたのでIKIKIKUNUNUくらいで止まったこともあるような気がする。
いききくぬぬぬぬは、我が家で生み出された名前の中で、最も数奇な運命を辿ったものだといえよう。

同じ名前を使っている人がいたらどうしようと思い、googleで検索したが、さし当たって該当するページが見つからなかった。一安心。

今回、いききくぬぬぬぬに敬意を払い、コピー&ペーストを利用せず、すべていちいち入力した。

こちらに背を向けている中央の人物はドラゴンクエストの主人公の名前を「けんた」としたそうだ