原体験

ジャイアンツの背番号8といえば原辰徳だという話ではない。

思えばずっと動物が好きだったのだろう。

20年以上前、小学生になるかならないかのころ、テレビCMを見て、秋吉台のサファリランドに行きたくなった。
親に希望を伝えたら「サファリランドは自家用車で回ることになる。危険防止のため、窓は常に閉めておかなくてはならず、エアコンが必要だ。エアコン付きの車に買い換えたら連れて行ってやる」と言われた。当時うちの車は確かすでに5年以上経過したサニーで、エアコンなど付いておらず、フェンダーミラーだった。ちなみにナンバーはたぶん[ふ 62 45]。軽自動車もあったがこちらもエアコン無し。ナンバーは[さ ・1 46]だったと思う。
考え付く限りの手段に訴えたが(泣き落とししか考え付かなかったような気がする)、要求は容れられなかった。

数年経過して、サニーはスプリンターに買い換えられた。スプリンターにはリモコンドアミラーもエアコンも付いていた。当然私はサファリランド行きを訴えたが、何らかの理由ではぐらかされた。その後も折に触れサファリランドの話を出したものの、決して受諾されることはなかった。

また数年が経過し、山口ニュージーランド村が開園した。これまたテレビCMを見て、羊が駆け回る姿に心をうたれた私は、ニュージーランド村行きを訴えた。
どういうわけかこちらは比較的簡単に受け容れられ、母、姉、そしてサファリランド行きを拒否し続けた父親をも伴って行ったような気がする。ひょっとしたら父親は不在で祖父母が同行したのかもしれないが、たぶん父親だった。このとき発した「お姉ちゃん、羊見に行こー」と言うせりふについては、今でも姉に『あんたの口からあんなかわいらしい台詞が出てくるとは思わんかった』と蒸し返される。現地では(コマーシャルほどにぎやかではなく残念だったような気がするが)羊を見て喜んだ。

その後、スプリンターは2台買い換えられ、わが故郷では3代目のスプリンターが現役だ。軽自動車も1台買い換えられ、その次はマリノになった。これらはすべてエアコン付き。しかし、いまだサファリランドに行ったことはない。

ニュージーランド村行きがすんなり決まった背景には、サファリランドの代替イベントという取引があったような気もする。しかし、とにかく、20年以上前に交わした約束は守られていない。
私にとって「大人はうそつき」というやつの原体験だ。他人にこんな思いをさせてはならないと思っていたら、なかなかうそをつけない体になってしまった、と思うのだがそうでもないかもしれない。

一方、動物が好きなのは変わらず続いている。写真は日本製のぶたさんとチェコ製のたぶんかえるさん。