思い出せばキミを呼ぶよ遙か遠くここに

金曜日の夜は、業務の延長上での飲食会であった。
参加者の一人に、同じ会社に所属していながら、別の部署・別の建物に勤務しているという背景も手伝って、話をするのは今回が初めてのようなもの、という人がいた。この人は久しぶりに出会った尊敬できる変態で、我々が製作している商品の要素を実践しまくっていたという経歴を聞かせてもらった。
金曜日の昼間に、奈良県で散髪しようと思い立ったのだが、実際に行くかどうかは土曜日起きてみてから決めようと思っていた。しかし、今回の変態話を聞いて、負けていられないという気分になり、絶対に行こうと決意した。
季節も良いし、土日は天気も良いようなので交通手段はXT660に決めた。自前のバイクで長距離を走るのは久しぶりだ。東名→名神→いろいろとつないで高速で奈良県入りするか、浜松まで東名で行って、国道で伊良湖岬まで行き、鳥羽にフェリーで渡って奈良県入りするか、どちらかだろう。
いずれにしても、午前4時までに高速道路に乗るべきだ。昨今の自分の体力を考えると、出発前に一眠りした方が無難なので、早く帰りたかったが、変態話が面白く、最後まで聞くことになった。会費は一人5000円。幹事に一万円札を渡したら、小額紙幣がないということで、返金は火曜日ということになった。財布の中には1万数千円しか入っていなかったはずなので、ここで5000円返ってこないと、残りは数千円だ。交通費はクレジットカードが使えるので何とかなるか。
結局帰宅したのは0時半。帰りがけに行き着けのガソリンスタンドで満タンに給油しておいた。少し準備をして風呂に入って1時半に寝た。
いちどは3時10分に設定した目覚ましで起きたのだが、二度寝してしまい、こんど目を覚ましたときは3時38分。あわてて家を出て、最寄のICに向かう。XTには時計がついているが、この時計が4,5分進んでいる。ICのゲートを通過したときは時計が4時5分を示していた。深夜割引にぎりぎり間に合ったかどうかというところだ。
天気は悪くないのだが、御殿場に向けて標高をあげていくと、寒く感じる。しかし、夜が明けて日が昇ると、暖かくなってきた。バイクはこの体感温度の変化が魅力的でもあり面倒でもある。この感覚はなんだか久しぶりだ。
途中休憩しながら西進。全線高速で行った場合、深夜割引が適用されていないと傷口が広がる。浜松西ICで高速を降りて、フェリーを利用することにした。ICで表示された料金は割引されていなかった。後に正確な時計とバイクの時計を比較すると、ちょうど4分ずれていた。1分差で深夜割引に間に合わなかったらしい。
ICを降りて南に向かうと、道端の畑に生首式の案山子が設置されていた。渥美半島に入った瞬間に雨が降り出し、かっぱを着る羽目になったが、伊良湖岬に着くとまた晴れてきた。この時点で、燃料警告灯が点いて100kmほど走っていた。7時を過ぎて、たいていのガソリンスタンドが開店していたが、浜松からここまで、ハイオクは1L156円以上。自宅近所の150円に比べると高すぎる。満タン15L入れても90円しか違わないのだが、少しでも安いガソリンを入れたいのだ。
フェリー乗船中の1時間は丸ごと睡眠に充てる。下船後、ガソリンスタンドを探すが、やはり1L156円以上。伊勢方面に向かっていると、ついにガス欠症状が発生。それと同時にセルフスタンドの看板が目に入り、なんとかがんばってスタンドにたどり着くと1L152円だった。危なかった。
(つづく)