抗う術は我が手には無い

zushonos2006-09-30


近頃、一家総出でとある姐さんのファンになった。で、食事会が催されたのだが、その場での嫁と姐さんの意気投合ぶりに嫉妬。というのはやや過剰な表現であるが、本日、水面下に於いて、ファン冥利につきる出来事があった。もっとも、この場合の「ファン」の対象は、ジャックさんである。居合わせなかったジャックさんファンには嫉妬されるであろう素敵な出来事であった。
昨今、社内の組織変更があり、またぞろ、外部発注しない引越し作業が行われた。同じ水面下での席替えが中心ではあったが、私の席は従来ママで、ジャックさんは中庭の向こう側に移ってしまった。もちろんこの引越しの過程で、キャップ-本体-キャップが色違いの蛍光ペンを目撃して喜んだのは言うまでも無いが、今回の楽しみはそれだけのものではなかった。
午後早い時刻から始まった引越しでは、移動する人は必然に迫られ、そうでない人は(たぶん)通常業務を放棄する根拠として、荷物の運搬や清掃に従事した。私はもちろん後者であったので、ときどき若ぶって重いものを持ってみたり、軽いものを持ってみたり、不要な資料を捨てたりした。特殊な出版物の編集が主要業務である水面下に於いては、資料廃棄の時期を見計らうのがなかなか困難で、多くの人々がさまざまに溜め込み、忘却している。引越しはその記憶を呼び覚ます効果があり、また資料以外にも大量の廃棄物が出るので、便乗して捨てやすいのである。
そんな作業が終わり、地上(ときどき水面下)の社員食堂で、今回の人事異動に伴う歓送迎会が行われた。比較的早い時間帯にジャックさんのスピーチがあり、やはり決して短くはなかったそれはファンには喜ばしいものであったが、これもまた重要ではない。そんなことより今回は10人近い人たちが前に出て喋り、皆一様に話が長かった。それなりに沁みる話が多かったのが幸いだった。
話の合間に、用意されたおやつや刺身を飲み食いする時間が設けられ、適当に飲んで食って喋り散らすあるいは居たたまれなくて席を外したりちょっと離れて立ったり座ったりする人もいる。私は遠くからジャックさんの有様を眺めて喜びに震えていた。
ジャックさんは、肘を開いて両前腕をテーブルに載せ、掌があるあたりに顎を乗せ、足元はすっかりしゃがみこんで、ともすれば下からねめつけると言われそうな有様で、役職としては建物内で2番目とか3番目に偉い人(ジャックさんよりもたぶん15歳くらい若い)に対して何事か(おそらく「理想の特殊な出版物とは何か」といった主題とそこから派生する実にさまざまこまごました内容)喋り続けていた。写真食堂は相当にぎやかになっており、完全に身を起こした状態では、下からねめつけるジャックさんの話がよく聞こえなかったのだろう、2番目とか3番目に偉い人は、両手をハの字に開いてテーブルに両手をつき、中腰になって耳を傾けていた。
とまあ、これはこれで良かったのだが、もっとも素晴らしい出来事は、引越し作業の最中に遡る。
自分の机の移動が比較的早く済んでしまったジャックさん(おそらくジャックさんを慕うものどもが精出して働いたと思われる)は、手持ち無沙汰になったのか、そのほかの引越し作業にも活躍されていた。その一環で、廃棄物の臨時収集現場所を知らしめる活動をなさったのである。少々背景を説明すると、水面下の廃棄物収集場所は、今回の引越しの中心地から最も遠くに位置しているため、中心地にほど近いところに臨時の収集場所を設けるのが効率が良いという大勢の意向があったのだ。
誰かが、通常は通路になっている壁際を臨時収集場として指定したのだが、現場付近には、まだ必要なものが入ったダンボールが置かれてしまって、必要/不必要の別がわからなくなる恐れがあった。そこで、ジャックさんは、A3サイズの再生用紙に、臨時収集場案内のテキストを大書して、壁に掲示した。
わざわざ借りてきて置くやつはきっといませんよ。
以前、ジャックさんに校正のやり方を教わったことを思い出した。

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