雷鳥

らいちょう

キャンプの翌日は快晴。この日は立山に宿をとってあるので、早めに移動して立山周辺を歩く案と、せっかくなので福井県内を回ってから夕方立山に行く案が浮上した。
まず近所の永平寺に行くことにした。高校の修学旅行で南禅寺永平寺のどちらかに行って座禅体験をしたはずなのだが、どちらか思い出せずにいたのだ。
永平寺に行った結論は『ここは面白い』というもので、修学旅行で来たかどうかはわからずじまいだった。
門前町の土産物屋による駐車場勧誘合戦は見苦しいがまあ仕方あるまい。拝観料500円もどうしたもんかいなと思ったが、順路に従って最初に入った広間で、ワンオヴザ僧侶による「永平寺拝観の手引き高座」のごときものが催されており、寺の成り立ちや、僧侶が修行に励む寺なので、写真撮るのはかまわんが僧侶にカメラを向けるのはやめてくれといった説明があった。これを聞いただけで400円分くらいは回収した気分になった。高座と書いたのは、このときの説明担当の僧侶の外見が春風亭昇太(自体は嫌いなんじゃが)風味であり、また喋りも流暢であったからである。ただし着用している眼鏡は黒ふちであって、この昇太以外の眼鏡っ僧侶も、着用している眼鏡はすべて黒ふちであった。おそらくそういう決まりになっているのだろう。
順路に従ってずんずん進むつもりだったが、建物やら置物やら僧侶やらがいちいち面白く、なかなか先に進まない。写真を撮る際、暗がりでフラッシュ使用禁止の場面ではαの手ぶれ補正が心強い。それでも手ぶれるときはISOの感度を上げまくる。山肌に建てられた七堂伽藍は順番にめぐっていく移動自体が楽しめる。以前「京都は寺社を集めたテーマパークで寺社ひとつひとつはアトラクションである」てな話を聞いたことがあるが、永平寺はテーマパークとしての規模は京都に負けるが、一つのアトラクションとしては相当充実している。
祠堂殿では法要が行われており、僧侶5人くらいの読経合唱が見事であった。位が高そうな僧侶を中心に、その他大勢風味の僧侶はフォーメーション変更を頻繁に行っているようだ。これもまた私にとっては一大エンターテイメントである。
ひととおりまわって、永平寺の一日紹介的なビデオが流されている200畳くらいの部屋で復習。このビデオで最も印象に残っているのは、僧侶が要所で寺の廊下を走りまわる場面。「廊下/プールサイドは走ってはいけません」と教えられてきた私にとっては、高校の水泳の授業でせっかちな教師に「お前らはよ走って整列しろ」と言われたとき以来の衝撃であった。ちなみにビデオに登場する眼鏡もすべて黒ふち。
最後に宝物殿を観て永平寺終了。宝物殿だけでも美術館の企画展なら300円はとるだろうなあ。
1時間くらいで切り上げられると思っていた永平寺に、結局3時間滞在したので、この日立山を歩くことはあきらめて、越前岬から東尋坊まで海岸線を走って夕方の立山着を目指すことにした。
海岸線のキャンプ場は満員だったがとてつもなく暑そうで、なんだかかわいそうになった。東尋坊は修学旅行で訪れた場所だったが、記憶にあるよりもはるかに観光地で、ミッキーマウスっぽいやつなどがいた。東尋坊後高速のICに乗るまでは、前の車が異常な運転を続けるので恐ろしかった。BMWのZ3で、頭が悪そうというよりも頭が悪いと断言できる外見の若い兄ちゃんが運転手。んで助手席は同様に頭が悪い姉ちゃんが乗っていた。ときおり向き合って話しているだけならまだ「死ね」で済むのだが、話していようがいまいが、常に右のタイヤが中央線以右(という表現はあるのか知らんがつまりセンターラインを踏んでいるかもしくは右にはみ出している)なので何を考えているのかわからない。兄ちゃんも気違いだがそんな運転手の隣に乗って平気な姉ちゃんも気違いだ。半キャップに半袖、短いスカートにハイヒール、素手でタンデムシートに座っている姉ちゃんと同程度。見ているこちらが怖いので消滅してくれ。ずっと追い越し禁止の道路が続いたので、途中ガソリンスタンドで給油して逃げた。
立山の宿に着いたのは18時過ぎ。この日と翌日の連泊だ。翌日は室堂まで行って、一応雄山に上り、あとは雷鳥の写真を撮るのが目的。チェックインしてさっそく風呂に入っていると、宿の人が「19時までなら立山駅で翌朝のケーブルカーのチケットが買えます」と教えてくれたので慌てて風呂を切り上げて買いに行く。駅までは車で10分足らず。始発のチケットが取れた。駅から宿まで帰る上りのワインディングでエスティマか何かにあおられそうになる。晩飯食ってさっさと寝た。
翌朝は曇り。5時40分頃宿を出て立山駅に向かう。駅に近い駐車場はすでに埋まっており、川原の臨時駐車場の一番奥に案内されてしまった。ケーブルカーの始発は6時なので、走りまくり。気温はまだそれほど高くなかったが早速汗をかいた。
ケーブルカーは満員で席に座れない。美女平では10分ほど待ってバスに乗り込む。バスでは宿が朝食の代わりに用意してくれた弁当を食ってあとは寝る。
室堂のターミナルに着くと、修学旅行の記憶が蘇ってきた。ここは確かに来たことがある。修学旅行ではそのままアルペンルートをつないで大町に抜けたのだが、室堂での乗り換え待ち時間に少し外に出ていたら存外に待ち時間が短く、引率の教師に文句を言われたような気がする。してみるとまったく具体的な記憶が蘇らない永平寺はやっぱり修学旅行で行っていないのかもしれん。
室堂は快晴。雄山にもまったく雲がかかっていない。カメラのレンズを滅多に使わない広角ズームに変更。暗いレンズなのだが、これだけ天気が良いとシャッタースピードもずいぶん速い。実はまったくもって速すぎたのだが、このときは喜びと眠気で異変に気づかなかった。登る前、途中、山頂から、写真撮りまくり。
雄山に登頂。神社で500円払ってお祓いしてもらい、さらに鈴をもらう。雷鳥は見当たらないが、個人的には雷鳥サイズと思い込んでいる茶色い鳥がけっこうな速さで高く飛んでいくのは2,3度見かけた。ほかにツバメが飛んでいた。
雄山を降りてから望遠レンズに換えて、じっくり鳥を狙おうと思っていたが、あまりにも天気がよく、大汝山のほうに縦走してみたくなってしまった。結局、大汝山と富士ノ折立にも登頂し、雷鳥沢に下る。この途中で手提げかばんを持ち、なんだかクールビヅ風味の半袖シャツとパンツ、靴はビヅネスシューズでこそないがトレッキングシューズでもないスニーカーを履いた初老のおっちゃんと抜きつ抜かれつの状態になる。おっちゃんはときどき「ひざが笑っちゃうよ」などと独り言を言っていたが、キャンプ場に着いたときは携帯電話でなにやら喋っていた。私と嫁は、このおっちゃんの人物像を「千葉市に在住。健康だが、少々ぼけてきた。今回は家族に『たてやまに買い物に行ってくる』と告げて出てきた。家族は館山に行ったものと思っているが、おっちゃんは立山に来てしまった」と決めつけた。
人が多すぎるのか、天気が良すぎるのか、雷鳥の気配はまったく感じられない。それでも山を下りきったので、そろそろレンズを望遠に換えようかと考えていて、ふと気づいた。シャッタースピードが速すぎる。永平寺で暗い中写真を撮ってからISO設定を変えていないのではないか。ISOを確認してみると、1600になっていた。ワアイ。脱力。憤懣やるかたないが、ISO100に変更して、下からの写真を撮る。撮りまくるほどの元気はない。山頂には雲がかかり始めていた。
結局雷鳥どころか鳥の姿も確認できないままみくりが池温泉についたので入浴。気持ちよい。次回はここに泊まってひたすら雷鳥を待ちたいものだ。喫茶店でチーズケーキとトースト食って室堂終了。17時のバスで下る。美女平でケーブルカー待ち。待っている間に悔し紛れに生でない雷鳥写真撮りまくり。立山駅に着いて、遠い遠い駐車場に歩いていくと、川原に入った瞬間に大量の虻がまとわりついてくる。じたばたしながら車に乗り込んで急発進。宿について、風呂入って飯食って寝た。
翌朝はだらだらして9時にチェックアウト。9時半の開館と同時に立山博物館に入る。この博物館は3つのパートに分かれている。1時間程度で切り上げるつもりが、とても楽しく、結局4時間くらい滞在。これで600円は安い。まんだら遊苑の地界は相当怖い。天至界はなんだかすごい。ちょっとだけ鳥とカモシカの写真も撮れた。
有峰林道→安房峠→中央道渋滞、下道に下りても渋滞で22時過ぎに帰宅。自宅は暑い。毎度のことながら戻ってきたことを後悔。
会社で雷鳥話をしていたら、部の偉い人・ポールが、別の趣味を遂行する過程で雷鳥を見まくっているということが判明した。ちくしょう。

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