素直になれない

仕事しないことにしたので家でハイク。午前中に家の片付けが行われたので、以前からねたにしようと思っていた蔵書を探すと、すぐに見つかった。
徳間書店から発売された、昭和61年4月15日初版発行のわんぱっくコミックス「ファミ魂ウルフ(1)」がそれである。
初版時というよりも、何かの雑誌に掲載された時点でも読んでいたのだが、この単行本は大学生のとき古本屋で見つけて懐かしさから購入した。内容はつまりファミコンロッキーやファミ拳リュウと同様で、なんだか主人公が壮大なファミコン大会で活躍するというものである。ロッキーの強さが何に由来するのか忘れたが、リュウはたしか拳法家であった。ウルフはエゾオオカミに育てられた野生児で、名前は「野生命知狼(やおいちろう)」。山奥に住んでいたが、剛田コンツェルンにスカウトされて紆余曲折という話。
当初、剛田コンツェルンの社長は、命知狼をファミコン部門のマスコットにする計画を持っていた。下の画像は社長の妄想の場面。

背景に描かれた架空のファミコンソフトのタイトルが秀逸。隠れて判読できないものも一部想像で補うと「ターザーンゲーム」「宇宙探検」「世界一周」「ボクシング」「○○ロボット」「地底人の反撃」「○○サーキット」「ロードスプリンター」「ゴルフゲーム」「ミラクルエース」「ネ○○○○」「○○ゲーム」「イネカリゲーム」等。最後のやつは「いっき」へのオマージュじゃろか。
ともかく、このページでは命知狼は「剛田のファミコンゲームで日本一になった」と言わされる計画だったのだが、社長の卑劣なやり方に反発して、コンツェルンと対立する道を選び、剛田の刺客とファミコン大会で勝負する。刺客は、剛田コンツェルンが抱えるファミプロNo.1、熊田の息子をはじめ、『1秒間に50連打できん』場合はCクラス(詳細不明)に格下げされてしまう道場で鍛えられた精鋭(たぶん小学生)だ。
残念ながら大会では『剛田のゲーム』は登場しない。ちなみに1巻に登場するゲームは「シティコネクション」「ゲイモス」「スーパーマリオブラザーズ」「ボコスカウォーズ」「頭脳戦艦ガル」「マッハライダー」と、渋い。
熊田の息子との勝負に勝った後で、1巻の、というよりも何巻まで発売されたかしらんけどこの漫画中いちばんの見所が登場する。「剛田のファミコンゲームで日本一になった」という事象について「剛田のファミコンゲーム」のみならず、「日本一」にさえも反発したと思われる場面が下の画像。
もちろんレタッチなど一切していない。

ルビはちゃんと「にっぽんいち」である。
初めて読んだ大学生のときは、これを純粋に楽しむことができた。どうやったらこんなことになるのか、徳間書店大丈夫かというのが素直な感想で、数少ない交友関係にも「こんなの見つけたぜ」とふれて回ったものだ。
ところが、数年後、水面下の業務にあたるようになると、ここまで堂々としたものはなかなか見当たらないが、似たような事象は多数あるのだとわかった。そればかりか、自身が当事者になって精神的外傷を負ってしまい、素直に笑えなくなったのである。傷はようやく癒えてきたような気がする。