遠くからキミが声を枯らして呼ぶような夜はこんな歌で迎えようか

zushonos2007-10-16


(4日前の続き)
近年の散髪では、ろくに睡眠をとらずに深夜に移動するなどして、肝心の散髪のときに不覚にも眠ってしまうことが多かったが、今回は出発前とフェリーでの仮眠が効いていたし、ETC割引時間やガソリン残量、残金とATM、狭いトンネル、見つからない散髪屋など、近年稀に見るほどさまざまな要素がぎりぎりで、楽しさのあまりまったく眠気を感じなかった。
おばちゃんも適度に会話してくれる。どこから来たのか、今日はバイクでは寒くなかったかなど、当たり障りの無い話から始まって、どこを走ってきたのか、あれを見たかといった話になる。
奈良県で散髪することが目的で来たことを名言し、野迫川村黒滝村で散髪屋が見当たらなかったことを告げる。おばちゃんは黒滝村在住で、以前は黒滝村内にも散髪屋はあったが、店主が高齢であったり亡くなったりで廃業してしまったそうだ。
この散髪屋は、11月いっぱいで、国道の拡幅に伴って立ち退きになるそうだ。おそらく立ち退きの補償金といったようなものもあるのだろうが、65歳になったおばちゃんは「年金ももらえることだし」と廃業を決意したという。20歳のときから自分の店を持って散髪屋をやっていたという。実に45年の散髪屋歴に終止符を打つきっかけが立ち退きというのはどんな気持ちなのだろうか。
初めて入った散髪屋で、散髪してもらう間のたった一時間話をしただけでは、真意などわかりようもないが、おばちゃんの話からは、45年間やり遂げたという達成感のようなものの中に、そうはいっても外からのきっかけがなければまだ営業を続けたかったという心残りが感じられたような気がする。
次回来るときはこの店はなくなっているのだろうけれども、黒滝村のおばちゃんの家に土産を持っていこうと決意して退出。素敵な一時間を過ごせた。
散髪屋を出て店の前に停めておいたバイクに戻る。くるくる棒はすでの消灯してあって、拡幅前の狭い国道を照らすのは散髪屋の窓から漏れる明かりのみ。この日は鈴鹿在住の友人と晩飯を食うことにしていたので、到着時刻を連絡しようと思ったが、散髪屋前で電話するのもなんだか気が引けたのでまずは北上。
峠の手前のドライブイン「ザ・トンネル」(串こんにゃくがなんとなく虫こんにゃくに見える)に感銘を受けたりしながらトンネルを抜けてふもとのコンビニエンスストアで休憩。時刻は20時前、地図を見ながら友人に電話する。推定100km強の道のりで、流れの速い名阪国道を経由するとはいえ、22時より早く着くことはないだろうといった旨を伝えた。
ここでまた燃料警告灯が点灯していたが、点灯してからの走行距離をふまえて燃費計算すると、ガソリンは鈴鹿までぎりぎりもつかどうかというところ。この日はぎりぎりはもうたくさんだったので、名阪国道に入る前に給油することにしてさらに北上。途中の市街地でガソリンを入れたら14L入った。予想以上にガソリンが減っていた。危なかった。どうやら燃料警告灯の点灯が遅かったらしい。天理市内を抜けて天理教の建物群にびびる。こいつはすごい。
名阪国道は以前何度か日中に走ったことがあって、それなりに流れの速さを知っていたつもりだったが、夜中はさらに高速で驚いた。おかげで鈴鹿には22時前に到着した。
(つづく)