出口なし

昨晩遅くなって、わりとよくある程度の頭痛が発生したが、就寝直前に激化して、記憶にある限りでは生涯初めて、自主的に市販の頭痛薬を飲んだ(薬は救急箱に備蓄されていた)。
突如、自分が父親に対して下していた評価を思い出した。まだ会話があったころにそう思ったのであろう、当時は父親を「世界で最も説得力がない」と評して悦に入っていた、というほどでもないが、まあ満足していた。私がまだまだいろいろと自信を持っていて、なにかと周囲に反発していみたい頃だったという背景もあるだろう。最初は遠慮していたが、面と向かって言ったこともあるような気がする。
私は当時中学生か、せいぜい高校生だったので、「世界で最も」という点については甚だ根拠が薄弱だが、「説得力がない」という点については、「休日、数時間外出して戻ってきたら、煙草をすわないのに妙に煙草臭くなって、安物のチョコレートを携えているので『パチンコに行ってきただろう』と問い詰めても、図書館に行ったなどといって否定するが、後日友人の父から『あの日パチンコ屋で出会って挨拶した』と言われる」という出来事や、「テレビをみながら眠っているのでチャンネルを変えると一瞬目を覚まし『みていたのだからチャンネルを変えるな』と主張する」といった、極めて小規模な事象が思い出される。
小規模かつ、素直に認めれば誰も文句を言わないであろうこと(パチンコは当時の我が家では許容されなかったか)を、身近な人物が、頑なに否定する有様を受け容れる度量が私にはなかったのだろう。
顕著なのは立ち居振る舞いや鳥志向であって、前述のような点に於いてはそうではないと思いたいが、私がどうやらずいぶんと父親風味になりつつあることが実感され、それならばと否定的な評価を忘れようとしていたのかもしれない。ともかく、思い出したことで、自分が父親に似ていることをまた受け容れがたくなってきた。
水面下での同僚の自転車兄さんの父親は、とある大企業を定年まで勤め上げた人で、この部分を切り取って自分の父親と比較すると、世間的には前者の方がはるかに立派だといえよう。しかし、自転車兄さんにとっては、やはり「自分が父親に似ているのが感じられ、それは少々受け容れがたい」そうだ(自転車兄さんとの会話から汲み取った私の解釈であり、実際には違うかもしれんよ、念のため)。話に聞く限りでは、大変に素敵な趣味(例:噴水づくり)や文芸をお持ちのようだが、自転車兄さんいわく「他人には面白いかもしれないが家族にとっては大変」とのこと。そうかもしれないが、私の父親は他人にも面白くないと思う。
頭痛薬に話を戻すと、今回私が服用したのは、テレビでもコマーシャルをやっているのをみたような気がする、よく聞いたことがある名前の錠剤だった。ともかく市販の薬を飲むのは初めてだったので、何錠飲めばよいかさえわからない。頭痛を堪えながら注意書きを読むと「一度に2錠、1日3回まで。飲むと眠くなるので注意」などと書いてあった。
あまりに頭痛がひどく、強い効果を期待していたことと、いつもの頭痛なら眠ってしまえば治るのだが、今回は頭痛のせいで眠れない、という考えから、「一度にたくさん飲めば、もし効かなかったとしても、よく眠くなるのではないか」という推測が導かれた。しかし、かろうじで残っていた正気が働いたのだろうか、思わず「これたくさん飲めば楽になるかな」と、半分以上眠っていた嫁に判断を仰いだところ、「馬鹿なことを言うな」と一蹴された。
正気が増してきて、「くすりにてをだす」というのはこういうふとしたことがきっかけになったりしたりしてと思ったりしてとしたり顔で書いてみたりして。
で、思い出した。今は音信不通だが、かつてわりと身近にいた年上の兄さんと与太話をしていたときに、先方の話の中に「ビッグな麻を用いているときにどうのこうの」といった趣旨の内容が含まれた(おかしな書き方ですが敢えて意味不明気味に)。中島らもの著作の話をしたりしていたので、その話と混ざっているかもしれないが、まああれだ。で、私は、その兄さんに親しみを持っていったことがおそらく大きな要因で、これに目くじらを立てるつもりはいささかも生じなかったのですよ。
一方、以前突然本来敬遠したい類の酒宴に招き入れられた際、その場はなんだか過去の飲酒運転自慢大会のようになっていて、(酒飲めないので)飲酒運転は絶対にしない(自慢するようなことではないけれどもね)と標榜する(ほかの違反はしてしまうが)私は大変居たたまれない思いをし、しかしここはいろいろあるのでオトナな振舞いで場の空気を読んで飲酒運転批判をせずに耐えてみせたぜ、ということがあった。
結局好き嫌いだぜ。
ともかく遵法しようぜ。

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