エコノミックコミック

zushonos2006-09-05

嫁兄、嫁妹によると、嫁はチンクルに似ているそうだ。ゼルダの伝説シリーズはひとつとしてまともにやったことがないので、これは否定も肯定もできない。そんなチンクルが主人公のゲームが発売されたということで、コマーシャルが流れている。「チンクルはお金に執着します」といった内容のナレーションが、ゲームの画面に合わせて延々と流れる。なんだか世知辛いなあと思っていたが、先日借りてきた漫画はもっと世知辛い内容であった。
UGヨンさまに借りたその漫画は「ウメ星デンカ

ウメ星デンカ (1) (てんとう虫コミックス)

ウメ星デンカ (1) (てんとう虫コミックス)

著者:藤子不二雄の第1巻。コピーライト表示は1977年であり、残念ながら発行日が記されていたであろうカバーは紛失されたようだが、おそらく初版に近いものであろう。F名義の表示になっていないことで1988年以前のものであることは確実だ。
大爆発してしまったウメ星。そのウメ星を統治していた「ウメ星王国」の王家の3人(王さま、きさき、デンカ)が、地球に住む少年・中村太郎の家に上がりこんで王国の再建を目指すという話である。ドラえもんオバケのQ太郎やら21エモンやらパーマンやら、既視感をおぼえなくもないキャラクタや内容が多いが、1話目で、ウメ星王家としての権威が地球人に通用しないとわかって(しかし王さまはそれをすぐに忘れてしまうのか、勲章を乱発する)から、金を稼いで王国を再建しようという大きな流れになる。
基本的に1話完結で11話収録。それぞれのお題は以下のとおり。「地球では王家の権威が通用しない」「地球の仕事(ビルの夜警)をやってみる」「ウメ星の技術で宿題などを代行して小銭を稼ぐ」「王国再建の拠点となる不動産を探す」「王家は勲章を発行することで臣下を働かせる」「株式を発行して王国を再建」「観光立国を目指す」「酒は身を滅ぼす」「立国記念日に王家の権威が通用しないことを再認識」「保険商品を開発して王国を再建しよう」「特別な勲章を使ってウハウハ」。大半が金や経済の仕組みについて触れた内容だ。
ドラえもん等の作品でも、本来の道具の使い方を外れて小遣い稼ぎをしようとして、結果失敗するという寓話的な内容は多数あったと思うが、こちらの場合は本来の目的が金儲けなのだ。ただし結果失敗するのは同様。
最も印象深いのは、不動産の話での以下の件。
この話の冒頭で登場するウメ星王家の侍従、ベニショーガ(ウメ星大爆発のさい、はぐれてしまっていた忠臣)が、王家再興のため、中村家の近所の広い家を徴用しようと奮闘するが、王家の権威は通用しないので、豪邸、質素な家、果ては犬小屋にすら住まわせてもらえない。こうなったら仕方がないと、ベニショーガは全て持ち出していた王家の財宝(と書くと悪いやつのようだがそうではなく忠臣)を使ってでも不動産を購入する方針に切り替える。そこで最初に見つけてきた「お城」は、どうみても東京都千代田区千代田1。お堀には白鳥だかカルガモだかが浮かんでいる。
警備の警官に「お金は何千億でもだすというのに。」と食い下がるベニショーガ。遠巻きに見守る王さま、きさき、デンカ。対する警官は「ここはぜったい売らないってのにわからない人だなあ。」とお手上げ。
このコマだけでも強烈だが、次のコマも素敵だ。
もはや半分逃げ腰で「いいかげんにしないとたいほするよ。」という警官。それでも食い下がるベニショーガ。それを遠巻きに見る通行人のせりふは「ばかかしら、きちがいかしら。」
ちなみのその後この通行人(たぶん詐欺師)に騙されて、高い金(ただしウメ星の通貨であったため通行人は「わあ、だまされた!」)を払って動物園の檻を紹介される一行。動物園の入園者が珍しがって寄ってくるのを見て、一向は王国の権威が復活したと勘違いするという場面が描かれる。
故・青木雄二や、そこから派生した漫画も、ここまでえげつないものではないと思う。

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